量子情報処理


誤り訂正チャンネル

 


量子情報技術とは、量子状態を情報源として扱い、古典情報源では実現できない情報操作を行うものである。具体的には、古典情報源と異なり、量子情報源が0ビットと1ビットの共存状態をとれることを利用するものである。このことはまた「エンタングル状態(注1)」と呼ばれる量子状態の実現を可能とし、これが、量子コンピュータ、量子テレポーテーションなどの理論的基礎となっている。同時に、我々は情報源である量子状態を保存、転送し、また(近似的な(注2))複製を行う必要がある。重要な点は、これらの量子情報操作の手続きが「設計論」を必要としている、ということである。

例えば、与えられた量子通信路を用いて量子状態を転送する場合、一般に状態はノイズを受け、受信された状態はオリジナルなものと異なってしまう。そこで我々は、送信側のencodingによって誤りを受けにくくし、そして受信側のdecodingによって誤りの訂正を行う。このような「誤り訂正チャンネル」は、すべての考えられる入力情報源に対して出来る限り誤りを訂正し、また量子通信路の環境変化に対してもロバストなものでなければならない。すなわち、我々の目的は上記の要求に対して最適、もしくは準最適な誤り訂正チャンネルを設計することである。

本研究の目的は、上記のような量子デバイスの設計を、システム制御理論の観点から行い、統一的な量子デバイス設計理論を構築することである。実際、システム制御理論の研究において積み重ねられてきた設計論としてのノウハウ、ツールは量子デバイス設計においても非常に有効である。


(注1)エンタングル状態とは、例えば、情報000と情報111の共存状態である。
(注2)一般に、未知の量子状態を(ユニタリ変換によって)複製することは
できない。これは「No Cloning Theorem」と呼ばれるものである。