有限周波数条件に基づく''制御しやすいシステムの特徴付け''


制御しやすい機構の性質として機構設計の立場では、 "振動モードの同相性" (その振動モードの運動方向が剛体モードの運動方向と 一致していること)が知られている。 しかし、この概念はモード分解に基づくものであるので、 システム論的な展開には向いていない。 そこで、この概念をシステム制御論的に発展させたものとして、 「有限周波数正実性」という性質を導入した。 具体的には、「動的な位置フィードバック制御器で達成できる 制御帯域 $\omega_0$ は概略以下に示す周波数と一致する。」という 事実に基づくものである。
  • $\omega_0$ 以下の周波数をもつすべてのモードが同相。
  • 制御対象$P(s)$が与えられているとき, $G(s):=sP(s)$$\omega_0$ 以下のすべての周波数で正実。
ここで、有限周波数正実性は、通常の正実性条件を有限の周波数帯域に 限定したもので、以下のように定義されている。


[定義1] 正方の伝達関数$G(s)$は、

\begin{displaymath}
G(j\omega)+G(j\omega)^* >0, ~~\forall~\omega\in{\bf\Omega}
\end{displaymath} (1)


\begin{displaymath}
{\bf\Omega}:=\{~\omega\in{\rm I\!R}:~\det(j\omega I-A)\neq0,~\vert\omega\vert\leq\omega_0~\}
\end{displaymath}

の条件を満たすとき、帯域 $\omega_0$ で 有限周波数正実(Finite Frequency Positive-Real:FFPR($\omega_0$)) であるという。

したがって,制御しやすい制御対象は、この有限周波数正実性によって 特徴づけられることになる。 そこで、より高い周波数 $\omega_0$ に対して FFPR となるように, 制御対象を設計するのが目標となる。 それに有効なのが、以下に示す有限周波数正実となるための 線形行列不等式(LMI)形式の必要十分条件である。


[定理3] 正方の伝達関数行列 $G(s)=C(sI-A)^{-1}B+D$, および正の実数スカラ$\omega_0$が与えられているとする。 このとき,$G(s)$ が FFPR($\omega_0$) となるための 必要十分条件は、

    $\displaystyle \left[\begin{array}{cc} A & B \\  I & 0 \end{array}\right]^T
\lef...
...2Q \end{array}\right]\left[\begin{array}{cc} A & B \\  I & 0 \end{array}\right]$  
  $\textstyle <$ $\displaystyle \left[\begin{array}{cc} 0 & C^T \\  C & D+D^T \end{array}\right].$ (2)

を満たす$P=P^T$, $Q=Q^T > 0$が存在することである。

上記の条件は明らかに変数 $P$$Q$ に関する線形行列不等式条件であり、 与えられた伝達関数 $G(s)$ が FFPR($\omega_0$)条件を 満たすかどうかの判定が、凸最適化問題を解くことにより 容易かつ厳密にできる。








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