この研究会について

津 村 幸 治 (研究代表者)

目的:
ロバストネスは生物システムのもつ重要な特性である.本研究会では制御理論・情報理論を用いて,これを解析・設計するための一般的な理論・方法論の枠組みを構築することを目的としている.

研究概要:
近年,遺伝子ネットワークや細胞集団の振舞いを大規模な動的システムとみなし,その機能を解析・設計することを目指すシステム生物学の研究が活発である.生体内現象の基本はタンパク質等の生化学反応にあり,単純な素反応の組み合わせにより,システム全体として,化学反応速度の変動幅,環境の変化, 外乱等の大きな不確かさのある中で,一定の機能をロバストに実現している.このロバストネスは最近のシステム生物学の主テーマのひとつであり,複雑な生体内システムの理論解析や実験を通して,その機能がもたらされる仕組みの議論が行われている.しかしながら生体システムの制御性能やロバストネスの 限界に関する定量的議論や,それを統一して捉える理論の確立は十分ではない.本研究会では,生体内現象のロバストネスと関連する信号の情報量の関係解明,また,その情報量に基づく生体内制御性能解析が, この状況を解決するための鍵であると考えている. 以上を背景に本研究会では,制御理論,理論生物学,分子生物学 ,免疫学,バイオインフォマティクスの各分野のアクティブな研究者を集め,相互の知見の交換と議論により,生物システムのロバストネスに関する,実験に裏付けされた一般的な理論・方法論の枠組みを構築することを目指している.