第1回講演会 発表要旨

「化学反応系の摂動応答をネットワークの形だけから決定する」  

望月敦史   (理化学研究所)

 生体内の化学反応ネットワークのダイナミクスを理解する目的で、反応を司る酵素 に操作を与え、濃度変化を測定する実験がなされ始めている。しかし、それらの結果は理解が困難だと考えられてきた。我々は、化学反応ネットワークの構造だ けから、摂動に対する応答を予測する新しい数理理論を構築した。化学反応系の応答はネットワークの形と摂動を与える箇所に依存して大きく変化し、特徴的な 振る舞いを示すと分かった。例えば、摂動応答に推移性や階層性が現れる。また、中心代謝系に適用した例を紹介する。生体内の化学反応には未知の反応や制御 が存在する可能性が高い。実験と理論の組み合わせによりこれらを予測し、実際の化学反応系の解明につなげたい。