第2回講演会 発表要旨
「個体スケールから集団スケールへ:生物個体群を統計力学的視点から見る」
大泉 嶺 (東京大学大学院数理科学研究科)
生物個体の生活史は種の特性を表す代表的な一つである。それらは広い意味で成長率、繁殖率、死亡率に関わる個性として見る事が出来る。例えば、推移行列モデルはこれら三つを内包する状態推移確率を調査データから導き、それらを用いて様々な生物集団の動態を予測する手法として確立されている。これは、ミクロな粒子の統計量から熱力学のようなマクロな現象を説明しようとする統計力学の思想に通じるものがある。推移行列モデルを含むこのような生態学の手法を、線形人口モデルと呼ぶ。本講演では、これら三つの生活史の要素がその集団の動態にどのように影響を与えるのか、線形人口モデルに統計力学の手法(とりわけ経路積分法など)を交える事で解説したい。